【目次】大阪毎日新聞学芸部編『変り学読本』

河原書店(京都)発行、昭和11年(1936)7月刊。

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函(左)と表紙(右)

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函ウラ(左)と裏表紙(右)
もくじ

"らくがき"の研究 ・・・・・・(1)

  • 新藤正雄(奈良市金鐘中学教師)

動植物の方言 ・・・・・・(7)

南方学 ・・・・・・(12)

きのこの気象栽培 ・・・・・・(18)

浪曲沿革史 ・・・・・・(22)

  • 松本朱像(和歌山新報社勤務、ゲテモノ芸術研究家)

ゴルフ文献研究 ・・・・・・(27)

  • 西村貫一(神戸に旅館経営、「日本ゴルフ史」の著書あり)

粘菌の研究 ・・・・・・(33)

乗車券文化史 ・・・・・・(39)

  • 山本不二男(大阪にて質屋営業、交通切符の蒐集家)

アダ名分類 ・・・・・・(45)

  • 大森重樹(大阪聾口話学校教諭、昭和七年京大哲学科出身)

写経の沿革 ・・・・・・(51)

  • 田中塊堂(大阪女子商業学校嘱託、泊園書院会員、石田茂作氏に写経を学ぶ)

小鳥による豊凶統計 ・・・・・・(58)

  • 筒井百年(彦根測候所長)

煙草入工芸史 ・・・・・・(62)

明治錦絵世相史 ・・・・・・(68)

  • 浅井勇助(大阪市書肆主人、明治世相史の大著述あり)

燈籠考証 ・・・・・・(74)

  • 鹿野久市郎(東京外語出身、天理外語教授、刀剣研究家として知らる)

"桜"病理学 ・・・・・・(80)

  • 長見正(島根県人、技師、京都在住)

温泉風俗研究 ・・・・・・(84)

  • 小澤清躬(神戸在住医学博士、レントゲン医学専門、温泉研究家)

染織溯源 ・・・・・・(92)

  • 龍村謙(東大美学出身、織宝美術の龍村平蔵氏令息)

俳優名雑考 ・・・・・・(97)

  • 杉岡文楽(大阪船場にて書店を経営、歌舞伎通として聞こゆ)

読めぬ金石文 ・・・・・・(101)

薪の土俗学 ・・・・・・(106)

広告世相考 ・・・・・・(111)

  • 岸本水府(川柳家、川柳雑誌「番傘」の主幹)

日本奇祭抄 ・・・・・・(116)

蔵書票研究 ・・・・・・(121)

  • 小塚省治(神戸服部長商店員、日本蔵書票協会を主宰)

上方敵討分類 ・・・・・・(127)

剣舞 ・・・・・・(132)

  • 今枝四郎(新聞界、経済界社社長)

甲賀流忍者研究 ・・・・・・(137)

  • 中西義孝(前滋賀県立窯業試験所員、水口町に自適す)

コーラス研究 ・・・・・・(144)

  • 小野芳之助(音楽研究家、阪神今津に寓居)

スクラツプ整理術 ・・・・・・(149)

  • 吉田亀寿(日本織物新聞社員、織物大鑑編纂中)

鴨川氾濫史抄 ・・・・・・(154)

  • 音代湘園(大阪船場某染料商社員、万葉集、王朝文学の研究家)

投網術 ・・・・・・(159)

  • 伊藤真一(大正七年東大法学部出、満鉄大阪出張所長)

川柳戸籍調べ ・・・・・・(165)

  • 水木真弓(奈良県の人、大正六年東大国文科出、松江高等学校教授)

スタヂオ音響学 ・・・・・・(172)

  • 和田精(BKのスタヂオ・デイレクター、舞台および放送に関する音響学的研究での権威者)

日本饑饉史考 ・・・・・・(179)

維新志士変名調べ ・・・・・・(185)

  • 高梨光司(元関西日報主幹、著述家)

流人考 ・・・・・・(189)

春日鹿害史 ・・・・・・(194)

  • 九尾萬治郎(奈良にて蒲団商を営む)

徳利語源説 ・・・・・・(200)

  • 野々田為吉(大阪東区長)

桃太郎童話新説 ・・・・・・(205)

  • 熊田葦城(著述家、鎌倉町に住す)

日本英語発達史 ・・・・・・(211)

  • 荒木田伊兵衛(大阪にて古本商を営む)

研究家紹介

 

序文

「変り学読本」といふのは今春、大阪毎日新聞"家庭と学芸"に連載した「変り学コンクール」を改題して纏めたものである。

新聞のつゞき物としてあしかけ三ヶ月間の記録を作つた一事だけで、いかに読者に歓迎された好読物だつたかゞわかつてもらへると思ふ。

新聞では「変り学」に振仮名して「だいがくいがいのがくもん」と歯の浮くやうなジヤーナリズム流行形式の標題をつかつたが、真意は"特殊研究"とやるべきところであつた、が活字ヅラがいかついといふシロウト衆にわからぬ感覚から排斥されて、一旦「雑学」に落ちついたが、それも雑は雑草、雑炊の雑で、幾分諸家の研究に礼を失する気もしたので、不満足だつたが「変り学」とふ新造語を用ひた。

収むる処の卅九篇、名の示す通り、どれもこれも風変りの研究である。しかも研究の一づゝを採れば優に一冊の単行本が作れる豊富な内容である、だがジヤーナリズムはその内容を圧縮してマクラだけを香はせ、一班(ママ)をもつて全豹を推す態の軽い読物にしたことはまことに相済まぬ次第だが、かうして余り世間の知らない、学校の先生にも教科書にも教はらない"学問"を紹介したことは新聞製作者として、ちょつと愉快な気もするのである。

 昭和十一年初夏   大阪毎日新聞学芸部

 

奥付
  • 昭和11年6月30日印刷、昭和11年7月5日発行
  • 定価:1円20銭
  • 編者:大毎学芸部
  • 発行:河原書店(京都)、発行者は河原武四郎 
  • 印刷:活文舎印刷所、印刷者は遠藤孝蔵

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奥付刊記

 

奈良女子高等師範学校報国会図書をめぐって

2019年度後期「近代国文学演習Ⅱ」の受講学生たちと一緒に、奈良女子高等師範学校報告会排架図書の目録を作りました。

学校報告会は、昭和16年に校友会を改組するかたちで各学校に設置された翼賛組織ですが、奈良女子高等師範学校では、本校とは別に図書を購入して排架しています。奈良女子大学文学部図書室残存分という限られたものであり、かつ原簿や貸出記録まで残っていないなかで限定された史料からのアプローチになりますが、奈良女高師における報国会図書の一端、およびアプローチ方法について考察したものとしてお読みください。

 

『なら学研究報告』2号(奈良女子大学なら学研究センター、2020.3)

講習会「国語国文学史料へのデジタルアプローチ」のご案内

文献史料を前に、みなさんはデジタルカメラをどのような設定で、どのような点に注意して撮影しているでしょうか。撮影後、そのデータをどのように利用しているでしょうか。

本講習会では堀内保彦氏と宮川真弥氏をお招きし、書籍、雑誌、新聞、文書簿冊など各種文献を扱いながら、撮影時の注意点から撮影データや画像データを利用しての分析までを実際におこなっていきます。デジタルカメラの基本的な設定を学び、どのような利用のためにはどのような撮影が望ましいのかを考え、デジタル画像をめぐる現在の技術や環境について皆で意見交換をしていく、研究者のための基礎演習です。

あらためて自身の史料撮影を見直してみませんか?

詳細はチラシをご覧ください。参加の際は、

  • 常時使用しているカメラをご用意ください。なお、その際はご使用のカメラの型番を事前にお調べください。設定でマニュアルが必要なばあいは、事前にダウンロードしておいてください。
  • 撮影画像をそのままパソコンに取り込みたいばあいは、あわせてパソコンをご用意ください。接続ケーブル等は各自でご用意ください。Wi-Fi環境は、こちらで用意いたします。PCやタブレット等とのワイヤレス接続の可不可につきましては、マニュアル等で事前にお調べください。
  • 撮影実習で使用する史料は研究会で用意しますが、ほかにぜひ撮影してみたい史料がありましたらご用意ください。

宮川真弥氏による「デジタル画像の匡郭間距離自動計測による版種弁別法」は、以下の宮川氏のご研究に基づくものです。事前にお目通しいただけますと幸いです。

  1. 宮川真弥「覆刻版における版面拡縮現象の具体相——匡郭間距離比較による版種弁別法確立のために——」(『斯道文庫論集』53、2018)http://bit.ly/KYOKAKU
  2. 宮川真弥「版種弁別用匡郭高測定プログラムRulerJB(仮)試作版のご紹介」(Researchmap研究ブログ)http://bit.ly/RularJBblog

なお、宮川氏による実習は整版本の分析になりますこと、ご承知おきください。

また、宮川氏ご作成の測定プログラムはWindowsOSのみ対応です。MacOSは非対応ですが、こちらでWindows機を数台用意してございますので、Macユーザーの方はそちらをご使用ください。

 

講習会終了後に懇親会を開催いたします。懇親会参加人数把握のため、参加予定の方は、本記事にコメントくださいますよう、お願いいたします。非公開設定にしておりますので、その際には連絡先をご記入ください。

あるいは、磯部Twitterアカウント(https://twitter.com/a24isobe)宛にDMをくださいますよう、お願いいたします。

どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

 

 

【目次】日本エディタースクール編『造本の科学(上)—造本篇—』

日本エディタースクール出版部発行、1983(昭和57)年9月。

オビ文は次のとおり。

現場の第一人者が語る造本技術の精髄
本は著作物と造本技術の結晶である。内容を正確に伝えるとともに、美しく読みやすい本をどう作るか。本づくりの実作業を受けもち、本づくり一筋に研鑽されている現場の製作技術者が、造本設計、装幀、書き文字、製本、製函、紙の各分野について、その技術と経験のすべてを公開する。

 オビ裏に同書下篇として「印刷篇」が紹介されている。内容は次のとおり。

●活字組版の話 ●写植文字の話 ●写真製版の話 ●活版印刷の話 ●オフセット印刷の話 ●グラビア印刷の話——1983年7月刊予定

下篇が刊行されたようすはない。

もくじ

はじめに

造本の科学(藤森善貢) ・・・・・・ 1
 1 造本目的にあった造本設計をする
   ・「造本の科学」とは何か
   ・本がよく開くということ
   ・装幀と文字
   ・レイアウトの適性ということ
 2 印刷と製本の接点を考える
   ・活字と紙とインキ
   ・印刷の適性ということ
   ・印刷と製本の接点
   ・仕上がりシロの効用
 3 製本を科学的に考える
   ・本の断裁
   ・製本の適性ということ
   ・製本様式の長所・短所
   ・本の丸みと開きとの関係
   ・表紙と見返しと扉の関係
   ・装幀材料と箔押し
   ・外函の効用
 4 出版社内の問題点
   ・新刊書にみられる造本の問題点
   ・出版物の製作構造と出版社の組織
 5 本づくりをどのように考えるか

本の読みやすさについて—活字の大きさと組方の変化—(藤森善貢) ・・・・・・ 61
 1 本の読みやすさと眼のはたらき
 2 わが國書籍の活字の使われ方
   ・明治前期(20年前後)までの活字の使われ方
   ・明治後期(20年以後)の活字の使われ方
   ・大正時代の活字の使われ方
   ・昭和前期・20年までの活字の使われ方
   ・昭和20年以後の活字の使われ方

装幀の話(藤森善貢) ・・・・・・ 83
 1 装幀の実際
   ・本はどのようにみられているか
   ・出版社のカラーと書誌学的要素
   ・頭の中で描く—束(装幀)見本を作成する—
   ・ラフスケッチからデザインの決定
   ・版下原稿の作成と製版
 2 装幀を流れとしてとらえる
   ・文字
   ・色彩
   ・材料の生かし方

書き文字の話(五島治雄) ・・・・・・ 101
 1 木版の時代
   ・教科書体の活字が生まれる前後
   ・教科書にも多用された木口木版
   ・味があった木版の活字
 2 字を生かすことが大切
   ・製版所との協力が不可欠
   ・書き文字は生きていなくては
   ・縦組の棒の比率、はね、こぶ、筆押え
 3 明朝体とゴシック体をまず会得
   ・書き文字の基礎は明朝体
   ・いい字を書こうと思うなら……
   ・ゴシック体に一番個性が出る 
 4 機械的な処理はできない
   ・書き文字は平体が多く使われる
   ・平仮名、片仮名の書き方
   ・文字のバランスをどうとるか
 5 経験と努力の積み重ねがいい字を生む
   ・視覚上のバランスをとりながら書く
   ・納得のいく仕事は楽しいもの

製本の話(牧経雄・佐々木正康) ・・・・・・ 133
 1 特許のことなど
   ・手作業の機械化を考える
   ・電車のスプリングを背貼紙に応用
   ・紙を切るにもいろいろ分析する
   ・折っただけで本が出来る特許
 2 本づくりに奉仕する
   ・落丁・乱丁防止に万全を期す
   ・角背ホローバックで工夫したこと
   ・どこまでも細かく気を配る
 3 刷本の引取りからかがりまで
   ・刷本を引取ることから
   ・一部抜き
   ・突きそろえと裁ち割り
   ・紙折
   ・別丁貼り込み
   ・見返しごしらえ
   ・台分け・目合せ
   ・丁合い
   ・糸とじ(かがり)
 4 ならしから背固めまで
   ・ならし—ひら締め—仮固め
   ・仕上げ裁ち(化粧裁ち)
   ・丸み出し—バッキング
   ・背固め
 5 表紙づくり
   ・表紙貼り
   ・箔押し
 6 表紙くるみと仕上げ
   ・表紙くるみ
   ・仕上げ
 7 仮製本と無線とじ
   ・仮製本
   ・無線とじ
 8 製本適性のある材料を選ぶ
   ・クロスは収縮の少ないものを
   ・初めて使うものはサンプルで試験をする
   ・印刷と製本の連係プレイ

製函の話(加藤義夫) ・・・・・・ 201
 1 束見本が生命
   ・製函業のむずかしいところ
   ・本がスルスルと出てくるように
   ・ボールの縦目と横目
 2 材料の使い方
   ・ボールの選択と吟味がたいせつ
   ・上貼紙にもいろいろあるが……
   ・正確で適切な指示がいい仕事をさせる

紙の話(青木喬) ・・・・・・ 217
 1 紙はどのようにつくられるか
   ・紙の原料、パルプ
   ・パルプとは何か
   ・紙の原料の調成
   ・抄紙
   ・塗工(コーティング)
   ・仕上げ・製品化
 2 紙にはどんな種類があるか
   ・紙の分類
   ・印刷用紙—非塗工紙
   ・印刷用紙—塗工紙
 3 紙の品質
   ・紙の基本特性
   ・光学的特性
   ・表面性と多孔性
   ・強度特性
   ・方向性と二面性
   ・その他の特性
 4 出版と用紙
   ・本文用紙
   ・口絵用紙
   ・表紙用紙

執筆者略歴

索引

戦後、池田小菊の発言

  • 『奈良日日新聞』昭和20年10月15日、2面

より以上の文化 政治的教養を
【小説家】
市内鍋屋町小説家池田小菊さんは語る
自由の■鐘 新日本の全土に美しく清らかな響をのこして鳴り響きました、さあ新しい朝です、私達は静かに来るべき日本のデモクラシーに耳を心を傾けませう先づトピツク婦人参政権の問題は——、結構です、しかし今の過渡期ですから一回や二回(の)失敗するかも知れませんが、此れはどうでもいゝ長き本来■人を思へば、しかし此れを契機として全日本(の)婦人はより以上の文化政治的教養を養はねばなりません、一夜漬けではとうていだめです、此れには私達も是非協力したいと思ひます、婦人文庫もよし、新生婦人問題の結成等急速に実現しなければならない事です、先づそれからですね

※不読箇所、欠損箇所は( )で補ったが、不明箇所は■で代替した。一部意味の通じない箇所があるが、原紙のまま。

  • 『奈良日日新聞』昭和20年10月17日、2面

文学の本道に還れ
【文学】池田小菊女史の綴る新生日本の文芸(復)興は——
   ◆
今後の文学の方向はと問はれゝば私はまづ(チ)ヤンバ(ラ)もの作家群自身のハラキリを勧告したい、チヤンバラものが文(学)の仲間にはいるかどうかは別の話として一度の戦争をかうも誤つた方向へ押し流してし(ま)つた大きな一つの力は何といつても戦争に便乗したチヤンバラものゝ跋扈だつたことはいふまでもない、彼及(び)彼女達が軍部と手を握つてどんなふう(に)戦争讃美の従軍記をかき、兵隊をかき、銃後の女性(を)扱つて来たかそれは私がいふまでもなく明白なこ(と)であらう、彼らは恥知らずにもそれに戦争文学といふ銘を打つて来たのだが可笑しなことに(、)どれ一つを取つてみ(て)も、それはとろけたやうな甘い主観ものばかりで文学にとつて最も大切な客観性が全く失はれてゐる、文壇では立派に左官級であるべき筈のものまでが野戦部隊の子供のやうな部隊長(、)揉み手でへい〳〵してゐる輩など見られたものでないであらう
破れて陣を退くとき連隊旗(を)置き去りにした兵隊がゐたら軍紀(は)彼に死刑を宣告するであらう、そのやうに、作家にも死にかへて守らなければならない最後の一線文学者の気魄といふものがなければならない、手(や)骨を折られ、脚の骨を折られても、文学者であるからは、背骨だけはまつすぐ立てゝゐたい、だいたいこのごろの作家(達)はずるい者も多いのだから、昨日まで戦争讃美文学をかいて来た同じそのペンで、今日からは甘い恋物語でもかいて、涼しい顔をしてゐるやうなものも出(る)ことであらう、だが、さうい(ふ)文学は今後どうなつてゆくか、これは暫く面目(い)見学だ(と)思ふ、(戦)争で名を売り金を儲けて来た作家たち(で)、ハラキリの出来るのはよいが、出来ないのは、まあ、こ(の)冬(に)那智の瀧にでもうたれて、文学者らしい修行することですよ

※不読文字、欠損箇所は( )で補った。

  • 【補足】小川晴暘の発言

疎開の国宝美術品 早急に古都へ復元せよ
【美術】古美術研究家小川晴暘氏(に)聴く
終戦と共に当然戦争中に疎開された回覧美術品は復帰されねばならぬのに未だこれがなされてゐないのは一体どうしたことであらう、今こそ日本的仏教美術を広く世界の各国に紹介する唯一の機会なのである、東大寺興福寺、博物館、正倉院等の美術品或ひは法隆寺中宮寺の仏教建築物、これ等を持つなら(は)世界的な古美術の都である、進駐軍アメリカ兵の中にも之等仏教美術の研究家が多数居り彼等の中にははるばる東京や京都からやつて来る人もある、無論我が(国)美術、建築家達も今後無数に来るだらうし罹災しなかつた唯一の古都として蒼穹に各美術品を公開しなければならぬ

(『奈良日日新聞』昭和20年10月17日、2面)※不読文字、欠損箇所は( )で補った。

【目次】亀井勝一郎『大和古寺風物誌』(天理時報社、1943/昭和18年初版)

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画像は架蔵本より。表紙は上村占魚。発行の天理時報社とあわせて以下のリンクを参照。

挿入図版写真は大鍬四郎。大鍬は、「昭和21年の大和タイムス(現奈良新聞)創刊時から平成4年の退社まで45年間にわたり写真記者として報道写真を撮り続けてきた」人物で、平成4年(1992)12月15日没(『奈良県年鑑 1995』、奈良新聞社、1994、p.292)。

異同

現在入手可能な新潮文庫本には見られない「帰依と信仰」があるなど、本文異同箇所多。新薬師寺「薬師信仰について」を例にとってみれば(以下、ルビ省略)、

新潮文庫(2015年12月84刷改版、p.223)

ところで金堂の薬師如来は、前述のごとく弘仁時代のみ仏であるが、眼病平癒を記念するため、とくにその眼は大きく創られてある。まるで異人のようだ。半眼に宿る仏願の深さはない。眼病平癒された故に仏眼も大きくしなければならぬというのは、後代僧侶と仏師の理におちた解釈なのではなかろうか。霊験を人為的に誇張するのは、信心のゆかしさとは云えまい。

▼初版(p.229)

ところで金堂の薬師如来は、前述のごとく弘仁時代のみ仏であるが、眼病御平癒を記念するため、とくにその眼は大きく創られてある。まるで異人のやうだ。半眼に宿る仏願の深さは失はれてしまつた。どうしてこんなことになつたのだらうか。私は拝観するたびに疑問に思ふ。 聖武天皇ならびに光明皇后の御祈念あそばされたのは香薬師の典雅と鷹揚のみ姿であつたであらうに。眼病御平癒された故に仏眼も大きくしなければならぬといふのは、後代僧侶と仏師の浅はかな解釈なのではなからうか。霊験を人為的に誇張するのは、果して信心のゆかしさであらうか。

のごとくである。また、ほかに同項末尾 、現行では「かかる信仰あって、はじめて無双の仏体も造顕されたことは既に述べたとおりである」の一文で終わっているが(p.228)、初版本は以下のように続く。

かゝる御念願にあつて、はじめて無双の仏体も造顕されたことは既に述べたとほりである。わが皇統において、屡々病人貧窮者を救済され給うたのは、すべてこの大悲願の尊き伝統に他ならない。たとへば 孝謙天皇天平宝字元年十二月に発し給へる御詔勅のごとき、かゝる御真意をあますところなく示されてゐると云へやう。即ち続日本紀巻第二十によれば、

「十二月辛亥、勅すらく、普く疾病・及び貧乏の徒を救養はむが為に越前国の墾田一百町を以て永く山階寺の施薬院に施す。伏して願はくは、此の善業に因りて朕と衆生と与に三檀の福田を来際に窮め、十身の薬樹を塵区に蔭り、永く病苦の憂を減して共に延寿の楽を保ち、遂に真妙の深理に契ひて自ら円満の妙身を澄さむことを。」

 畏くも「朕と衆生と与に」と仰せられて久遠の寿に万民もろとも参入し給はんと念じられたのである。とくにこの御詔勅を引用し奉つたのは、畏れ多くも 昭憲皇太后が明治二十四年四月現在の慈恵学園に賜つた令旨の中に、

天平宝字の勅の如く病苦の憂ひを減じ共に延寿の楽を保たしむべき仁恵をなさん事を望む」

 と仰せられてゐるからであつて、いまに至るまで飛鳥白鳳天平歴代の御念願は連綿とつづいてゐるのである。(pp.234-235)

このあたり、他箇所とあわせて検証を要する。

亀井(亀井勝一郎 - Wikipedia)が昭和41年(1966)11月に亡くなっていることから、青空文庫では2017年に『大和古寺風物誌』が公開されている。入力・校正に使用したのは「2015(平成27)年12月5日84刷改版」本。

ただし、大鍬や入江泰吉らが撮影した写真図版があることから、国立国会図書館デジタルコレクションで館内限定公開となっている。

なお、「2015(平成27)年12月5日84刷改版」の新潮文庫本カバーは入江泰吉の写真、口絵に小島啓佑氏と小川光三氏の写真を挿む。小島氏は新潮社所属のカメラマン、小川氏は奈良の古仏・古美術写真の先駆者である小川晴暘の三男。

奥付

昭和十八年四月十五日印刷/昭和十八年四月二十日発行 五、〇〇〇部/大和古寺風物誌 (停)参円/著者 東京府下吉祥寺二七六一 亀井勝一郎(ルビ:カメヰカツイチラウ)/発行者 奈良県丹波市町三島 岡島善次/印刷製本所 奈良県丹波市町川原城 天理時報社 西奈①/発行所 奈良県丹波市町川原城 天理時報社 一一九五〇一/配給元 東京市神田区淡路町二ノ九 日本出版配給株式会社

第2版未見。第3版(昭和18年10月)では「昭和十八年十月二十日三版発行(一〇、〇〇〇部)」、定価も「定価 (停)二円九十銭/特別行為税拾銭/売値 参円」となっている。

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目次

斑鳩
 飛鳥の祈り ・・・・・・ 2
 救世観音 ・・・・・・ 18
法隆寺
 初旅の想ひ出 ・・・・・・ 38
 金堂の春 ・・・・・・ 49
 宝蔵殿にて ・・・・・・ 55
 鳥仏師 ・・・・・・ 66
中宮寺
 思惟の像 ・・・・・・ 78
 天寿国曼荼羅 ・・・・・・ 91
法輪寺
 荒廃 ・・・・・・ 98
 虚空蔵菩薩 ・・・・・・ 107
薬師寺
 春 ・・・・・・ 114
 白鳳の光 ・・・・・・ 125
 塔について ・・・・・・ 146
唐招提寺
 秋 ・・・・・・ 152
 円柱と翼 ・・・・・・ 158
東大寺
 天平の花華 ・・・・・・ 166
 大仏殿にて ・・・・・・ 189
 不空羂索観音 ・・・・・・ 202
 講堂の址 ・・・・・・ 216
薬師寺
 高畑の道 ・・・・・・ 220
 薬師信仰について ・・・・・・ 226
 帰依と復活 ・・・・・・ 237
後記 ・・・・・・ 359

図版

図版目次
 夢殿(口絵)
 斑鳩の里 ・・・・・・ 28
 中宮寺の庭 ・・・・・・ 92
 法輪寺山門 ・・・・・・ 93
 薬師寺東塔(朝) ・・・・・・ 144
 薬師寺東塔(夕) ・・・・・・ 145
 唐招提寺金堂 ・・・・・・ 156
 講堂と鼓楼 ・・・・・・ 157
 金堂円柱 ・・・・・・ 164
 東大寺講堂の址 ・・・・・・ 204
 高畑の道 ・・・・・・ 220

  • 初版本「図版目次」頁末尾に「撮影 大鍬四郎」。第3版(昭和18年10月)では「撮影 大鍬四郎/装幀 上村占魚」。
  • 初版本における図版の向きはノドが上、小口が下になっているが、第3版ではその逆。
後記(pp.259-262)

後記
 はじめて大和の古寺を訪れたのは、昭和十二年の秋であつたが、それから毎年春と秋には年中行事のやうなつもりで出かけて行つては気のむくまゝに巡り歩いてゐた。その間、古寺や古仏に対する私の気持にも様様起伏はあつたが、すべて本文ならびに、巻末に附した「帰依と復活」といふ覚書の中にしるしておいたので、こゝにくりかへす必要はあるまい。ともあれこの六年間における私の巡礼記は本書にまとめられてあるわけだ。尤も私は古寺の一つ一つを詳細に語つたわけではない。当然語るべき幾多の古仏や伽藍を残した。といふのは、専門的な美術研究乃至案内書は他にいくらもあるし、私の念願したところはさういふ種類のものと違つてゐたからである。さゝやかながら発心の至情をもつて、また旅人ののびやかな感興をもつて、古寺に対したいといふのが私の願ひだつたのである。
 ところでかういふ本を刊行することが出来たのは、奈良の畏友前川佐美雄君と天理時報社の上田理太郎氏のお蔭である。いままでも時に古寺の感想を発表したこともあつたが、本にまとめることは考へてゐなかつた。偶々前川君を介して上田氏を知りあひ、その懇切な慫慂によつて、昨年の初秋から冬へかけて漸くまとめあげることが出来たのである。はじめの予定では、室生寺当麻寺慈光院など平安朝以後の諸寺もふくめるつもりだつたが、そこまでは及ばず、自分の屡々訪れた、また誰にも親しみふかい著名な寺を、飛鳥白鳳天平まで順を追ふて七寺だけ選び、六年間の思ひ出を参照しながらこゝにまとめあげた次第である。「飛鳥の祈り」「白鳳の光」「天平の花華」の三論文が全篇の骨子となつてゐる。
 前川君には随分御厄介になつた。通りすがりの旅人ならばつい見逃すであらう隠れた風景をみせて貰つたり、普通では拝観をゆるされぬ処まで拝観することが出来たのはすべて前川君の尽力による。東大寺の上司海雲氏にもおめにかゝり、戒壇院や大仏の蓮弁を親しくみせて頂いたし、またこの本のためにと、東大寺史を贈つて頂いた御厚情も忘れられない。
 上田氏も私の我儘な申し出を心よくひきうけて下さつて有難かつた。本書に挿入した写真は、すべて私の希望した場所から、希望した角度に従つて撮影したものであるが、写真に全く無智な私が文章や空想で示すところを、忠実に果してくれたのは上田氏と撮影者の大鍬四郎氏である。写真機を抱へて幾たびも古寺を巡り、再三吟味苦心されたさうである。氏の見事な撮影を載せえたのはこの本の誇りである。なほ装幀は私の若い友人である工芸家の上村占魚君にお願ひした。これも天平雲をといふ私の註文を心よくひきうけて、幾たびも雲を写生し、雲のやうな炎のやうな美しい図案が出来あがつた。諸氏に心から感謝した。
   昭和十八年早春
               著者

【目次】『大和の古文化』(近畿日本鉄道、1960/S35)

  • あとがき
  • もくじ

近畿日本叢書の第一冊目として刊行。

奥付より、

【年記】昭和三十五年九月十六日発行

【編者】近畿日本鉄道創立五十周年出版編集所(代表:村上昭房)

活版印刷】綜芸舎(藪田嘉一郎

【写真印刷】株式会社便利堂(代表者:中村桃太郎)

【製本】株式会社協真社製本所

【発行所】近畿日本鉄道株式会社 

近畿日本叢書全十冊は以下のとおり。

  1. 大和の古文化(1960)
  2. 伊勢の神宮(1961)
  3. 飛鳥(1965)
  4. 法隆寺(1969)
  5. 薬師寺(1965)
  6. 春日大社・興福地(1961)
  7. 当麻寺(1962)
  8. 東大寺(1963)
  9. 唐招提寺(1960)
  10. 室生寺(1963)

同叢書の所蔵館は以下を参照(CiNiiBooks)。

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