【目次】フレデリック・スタール『朝鮮仏教』(東洋民俗博物館、1931/昭和6)

23.5×15.9㎝。謄写版。表紙に「朝鮮仏教」。見返しに新刊紹介あり。同所に「お断り」一紙貼付。序文は「お札博士 フレデリック、スタール」。内題「朝鮮仏教 あやめ叢書第二巻/スタール博士著/九十九豊勝訳」。
CiNii Booksによれば滋賀県立大学(朴文庫)一館のみの所蔵となっているが、本記事は大阪大谷大学澤田文庫所蔵本による。同書前付に「呈上 澤田四郎作様 九十九豊勝」(ペン書き)の書き入れがある。
訳者の九十九豊勝は黄人とも号した人物で、東洋民俗博物館の初代館長。同館は「日本珍スポット100景」ホームページにも紹介され、
また奈良の観光雑誌『月刊大和路ならら』166号(2012.7)で「愛すべきエロじじい」として特集が組まれたりするなど(http://www.narara.co.jp/sub/1207.html)、「性」に関する民俗とのかかわりで紹介される人物である。
原著者のフレデリック・スタールについては、ひとまずWikipediaフレデリック・スタール - Wikipedia)等を参照されたい。九十九がスタールとはじめて会ったのは1915/大正4年のことで、通訳募集の広告がきっかけであったという。そののち幾度もスタールの国内紀行に同道するようになり、九十九の興味研究はスタールの影響のもとで育まれていった。九十九の人となりは『ならら』がくわしい。
澤田四郎作南方熊楠など彼の人脈や活動は多方面にわたっており、地域研究の文脈においてきちんと論じなければならない人物のひとりである。
【見返し「新刊紹介」】
新刊紹介/コロール酋長息エラケツ氏口述 宮武正道氏訳編/[南洋]パラオ島の伝説と民謡/厚表紙・美装本・参考図数種挿入・実費頒価七十銭・送料六銭/発行所 東洋民俗博物館 振替大阪七二六五三番
「コロール酋長息エラケツ氏」とはパラオ島出身のアテム・エラケツのことで、「天理教による第一回の内地留学生として来日し、1929(昭和4)年〜1933(昭和8)年の4年間にわたって天理教の教理と日本語を学んでいた」という(奈良大学博物館展示パンフレット『好奇の人・北村信昭の世界『奈良いまは昔』展』、奈良大学、2011、p.11)。訳者の宮武正道(1912−1944)は奈良県出身の言語学者で、エラケツとは宮武が主催していた「奈良エスペラント会」で出会ったようである(前掲展示パンフレット、p.11)。宮武については、黒岩康博「宮武正道の「語学道楽」—趣味人と帝国日本—」(『史林』94巻1号、史学研究会、2011.1)等を参照。
【見返し貼付「お断り」】
お断り/あやめ叢書第一巻『絵馬』を出してから早速第二巻を出す筈の処、何分にも第一巻は一冊六拾銭を要し二百冊製作について会員も少く、こゝまで六冊を見ると約三百円の損失となるので、この度は止むを得ず謄写版にして少しでも損失の過重を軽減した次第につき申込各位の御諒承を願ふ次第であります。必ず六冊全部は完成しますからどうぞ御安心の上長く御待ちの程を願ひます。   —編者より—
【序文】
    I have known Mr. Toyokatsu Tsukumo well for fifteen years and have watched his work with keen interest.    He has been a diligent student and has collected much curious material in folk-lore, and matters of taste.    I am glad that he is undertaking to publish the result of his study in Ayame-sōsho.    I believe the series will be of interest and permanent value.
                            Frederick Starr
          Ōimachi, October, 12.1930
私は過去十五年間九十九豊勝君の伴侶として彼の興味深い仕事を監視して来た。彼は勤勉な学徒であり又土俗学上の驚ろくべき多くの資料と興味深き物品とを蒐集してゐる。私は彼が研究の結果をあやめ叢書として公刊される計画を欣びとする。この叢書が趣味深きものであることゝ不変の価値あるものである事を私は固く信ずるものである。
   一九三〇ー一〇ー一二
          —大井町の寓居にて—
  お札博士 フレデリック、スタール
【跋文】
 この原著 KOREAN BUDHISM はお札博士 FREDERICK STARR Ph,D の著書にして数回の渡鮮によつてものせられたものであつて多数の写真版を挿入され且つ歴史の巻、芸術の巻、現状の巻の三部に分れてゐるが本書には唯だ芸術の巻のみとせり。
 翻訳は大正の末、昭和の始頃既でに成して居たるも今日まで其の機を得ず、荏苒延びゐたるものにして又訳するに当つて仏語と朝鮮固有名詞の和訳には誠に非才なる訳者を困憊せしめたるものにして野田静枝嬢の少からぬ助力の労に因つて成りたるものにして爰に同氏に感謝の意を表します。
          ——昭和六・一二・一——
【巻末広告等】
 □あやめ叢書
一、絵馬 [スタール博士著/九十九豊勝訳] 既刊
二、朝鮮仏教 [スタール博士著/九十九豊勝訳] 既刊
三、日本土俗玩具 未刊
四、日本俗信集 未刊
五、大隅異聞抄 未刊
六、性的神巡礼 未刊
一、石敢当私考 未刊
二、日本に於ける割礼の研究 未刊
三、桃太郎の三跡 未刊
四、フジヤマ 未刊
五、興福寺絵馬 未刊
六、琉球へ土俗行脚 未刊
 □配本規定
一、六冊ヲ以テ第一期完成。
一、分割配本ノ需ニ応ズ。
一、六冊配本送料共参円也。
一、送金ハ振替ニテ発行所ヘ。
【奥付】
「昭和六年十二月十五日印刷/昭和六年十二月三十一日発行/(非売品)/不許複製/編輯兼発行人 九十九豊勝/印刷人 後田秋子/印刷所 日本芸術社/発行所 奈良県生駒郡あやめ池一二九九 東洋民俗博物館 振替大阪七二六五三番」
【目次】
序文 ・・・・・・ (1)
本文(芸術の巻) ・・・・・・ 1
跋文(本文末尾) ・・・・・・ (21)
巻末広告 ・・・・・・ (22)