【目次】『大和の古文化』(近畿日本鉄道、1960/S35)

近畿日本叢書の第一冊目として刊行。

奥付より、

【年記】昭和三十五年九月十六日発行

【編者】近畿日本鉄道創立五十周年出版編集所(代表:村上昭房)

活版印刷】綜芸舎(藪田嘉一郎

【写真印刷】株式会社便利堂(代表者:中村桃太郎)

【製本】株式会社協真社製本所

【発行所】近畿日本鉄道株式会社 

近畿日本叢書全十冊は以下のとおり。

  1. 大和の古文化(1960)
  2. 伊勢の神宮(1961)
  3. 飛鳥(1965)
  4. 法隆寺(1969)
  5. 薬師寺(1965)
  6. 春日大社・興福地(1961)
  7. 当麻寺(1962)
  8. 東大寺(1963)
  9. 唐招提寺(1960)
  10. 室生寺(1963)

同叢書の所蔵館は以下を参照(CiNiiBooks)。

あとがき

 わが近畿日本鉄道の営業路線は二府五県に拡がり、近畿の大部分に通じておりますが、この地域は大和を中心として我が国文化の発祥地であり、その伝統は長く国史の上に持続され、その間に建設された古文化の遺産は地上地下を通じ、古代から近世に亘ってまことにおびたゞしいものがあります。

 前々代の社長種田虎雄は各種の文化事業に深い関心を払っていましたが、数度の欧米視察によって、それらの諸国の事業者がいろ〳〵の文化事業に力を尽しておるのを見て感ずるところあり、かねてから抱いておった日本文化の貴重な遺産、即ち歴史的の名勝旧蹟や、考古学的の文化財を研究史、保存し、顕彰することに努め、それがこの交通事業にたずさわるものの責任であり、また社会の恩恵に酬ゆる義務なりとして、その道野研究者数名を嘱託として、故文化財の踏査研究を委託したのであります。

 昭和十五年社は創立三十周年を迎え、また紀元二千六百年に相当したので、その記念事業の一として「大和路」叢書十三冊を発刊し、又映画「大和」三巻を制作したのであります。叢書はさゝやかな四六判百頁内外の小冊子ながら「法隆寺」、「西の京」、「当麻寺」等の歴史的古寺と、「飛鳥」、「吉野」、「山の辺道」等の旧蹟古社寺に富む名勝を、当時に於ける研究の新説と、観光の指導とを兼ねて略述したもので、映画「大和」と共に好評を得たものであります。

 なおこの種の仕事として大版「東大寺法華堂の研究」、四六版「栄山寺」、「飛鳥の古都」、「新薬師寺の研究」、「綜観法隆寺」等があり、次いで、その後の新研究も加えて「大和路新書」凡そ二十冊の続刊を企て既にその半ばを発刊しました。

 第二次世界大戦に破れた結果、我が国は国家的にも、社会的にも大変革を見、中でも国史関係のものには、今までの伝統による拘束から解放された為、自由研究が進んで純正な新学説が生れて来たことはまことによろこばしいことでありますが、一方奔放な主観に終始する学説も少なからず発表されることともなりました。

 こゝに我が社は創立五十周年を迎え、その数々の記念事業の一つとして社長佐伯勇は社業今日の発展にふさわしい大版「近畿日本叢書」十冊を発行して最近における大和文化財の新研究を集め、この種出版物の先端に立つに足るものの編纂を企て、奈良、京都の国立両博物館長に監修を依嘱し、社内の編集委員六名が専らその実務を担当することにしました。執筆者は協議詮考の上で、現在この方面の名ある専門学者五十余名を依頼することにいたしました。

 叢書は各冊B5大版、論文凡そ百五十頁、写真凡そ五十頁の規準で、「大和の古文化」、「伊勢神宮」、「飛鳥」、「法隆寺」、「薬師寺」、「当麻寺」、「春日大社興福寺」、「東大寺」、「唐招提寺」、「室生寺」の十冊とし、伊勢神宮以下九冊は「総説」、「建築」、「彫刻」、「絵画」、「工芸」の五項目に分けて、それ〴〵各自専門の学識を傾けて所説を提唱されることになっており、写真は古美術印刷に定評ある便利堂に依嘱して、論文に対応して新たに撮影したものを収め、すべてに内容の充実を期しております。

 われ〳〵はこの叢書に於て現在に於ける大和古文化研究の進展を示し、斯界学説総観の役を果して、今後の研究者に対して信拠すべき指針を与えるであろうことを期しておるのであります。

 終りにこの一冊「大和の古文化」は以下の九冊に対して、そのアウトラインとも序説ともいわるべきもので、古文化に対し、各自各方面より観察された論文なり、随想なり、又新発見について自由な所説、随想を集めたもので、読者の理解と興味を深めるに足るものと信ずるものであります。

  昭和三十五年九月十六日

     近畿日本鉄道株式会社

   監修 石田茂作/神田喜一郎

   編集委員 北島葭江/中村直勝/田村吉永/川勝政太郎/高橋公男/村上昭房

もくじ

法隆寺を想ふ(追憶と空想)(上野直昭) ・・・・・・ 1

古式古墳観(梅原末治) ・・・・・・ 35

古代大和の跡をめぐつて(亀井勝一郎) ・・・・・・ 57

飛鳥奈良時代の中国学神田喜一郎) ・・・・・・ 71

大和ぶり(佐佐木信綱) ・・・・・・ 80

やまとことば(新村出) ・・・・・・ 83

和文化のあけぼの(末永雅雄) ・・・・・・ 89

後南朝吉野川上について(滝川政次郎) ・・・・・・ 108

障壁画三題(土居次義) ・・・・・・ 125

奈良の仏教(橋本凝胤) ・・・・・・ 140

大和と万葉集—風土の問題を主として—(久松潜一) ・・・・・・ 158

仏像と人体美(矢代幸雄) ・・・・・・ 176

大和大神神社に蔵する周書の楊忠と王雄の伝の旧鈔本の考証(吉川幸次郎) ・・・・・・ 199

西の京の思ひ出(和辻哲郎) ・・・・・・ 211

図版 大和景観(撮影 入江泰吉