河原書店(京都)発行、昭和11年(1936)7月刊。
もくじ
"らくがき"の研究 ・・・・・・(1)
- 新藤正雄(奈良市金鐘中学教師)
動植物の方言 ・・・・・・(7)
南方学 ・・・・・・(12)
きのこの気象栽培 ・・・・・・(18)
浪曲沿革史 ・・・・・・(22)
- 松本朱像(和歌山新報社勤務、ゲテモノ芸術研究家)
ゴルフ文献研究 ・・・・・・(27)
- 西村貫一(神戸に旅館経営、「日本ゴルフ史」の著書あり)
粘菌の研究 ・・・・・・(33)
乗車券文化史 ・・・・・・(39)
- 山本不二男(大阪にて質屋営業、交通切符の蒐集家)
アダ名分類 ・・・・・・(45)
- 大森重樹(大阪聾口話学校教諭、昭和七年京大哲学科出身)
写経の沿革 ・・・・・・(51)
- 田中塊堂(大阪女子商業学校嘱託、泊園書院会員、石田茂作氏に写経を学ぶ)
小鳥による豊凶統計 ・・・・・・(58)
- 筒井百年(彦根測候所長)
煙草入工芸史 ・・・・・・(62)
明治錦絵世相史 ・・・・・・(68)
- 浅井勇助(大阪市書肆主人、明治世相史の大著述あり)
燈籠考証 ・・・・・・(74)
- 鹿野久市郎(東京外語出身、天理外語教授、刀剣研究家として知らる)
"桜"病理学 ・・・・・・(80)
- 長見正(島根県人、技師、京都在住)
温泉風俗研究 ・・・・・・(84)
- 小澤清躬(神戸在住医学博士、レントゲン医学専門、温泉研究家)
染織溯源 ・・・・・・(92)
- 龍村謙(東大美学出身、織宝美術の龍村平蔵氏令息)
俳優名雑考 ・・・・・・(97)
読めぬ金石文 ・・・・・・(101)
薪の土俗学 ・・・・・・(106)
広告世相考 ・・・・・・(111)
- 岸本水府(川柳家、川柳雑誌「番傘」の主幹)
日本奇祭抄 ・・・・・・(116)
- 田中緑紅(京都土俗談話会を主宰)
蔵書票研究 ・・・・・・(121)
- 小塚省治(神戸服部長商店員、日本蔵書票協会を主宰)
上方敵討分類 ・・・・・・(127)
- 後藤捷一(染料協会書記長)
剣舞考 ・・・・・・(132)
- 今枝四郎(新聞界、経済界社社長)
甲賀流忍者研究 ・・・・・・(137)
- 中西義孝(前滋賀県立窯業試験所員、水口町に自適す)
コーラス研究 ・・・・・・(144)
- 小野芳之助(音楽研究家、阪神今津に寓居)
スクラツプ整理術 ・・・・・・(149)
- 吉田亀寿(日本織物新聞社員、織物大鑑編纂中)
鴨川氾濫史抄 ・・・・・・(154)
投網術 ・・・・・・(159)
- 伊藤真一(大正七年東大法学部出、満鉄大阪出張所長)
川柳戸籍調べ ・・・・・・(165)
- 水木真弓(奈良県の人、大正六年東大国文科出、松江高等学校教授)
スタヂオ音響学 ・・・・・・(172)
- 和田精(BKのスタヂオ・デイレクター、舞台および放送に関する音響学的研究での権威者)
日本饑饉史考 ・・・・・・(179)
- 吉川一郎(大阪毎日新聞社航空部観測台勤務)
維新志士変名調べ ・・・・・・(185)
- 高梨光司(元関西日報主幹、著述家)
流人考 ・・・・・・(189)
春日鹿害史 ・・・・・・(194)
- 九尾萬治郎(奈良にて蒲団商を営む)
徳利語源説 ・・・・・・(200)
- 野々田為吉(大阪東区長)
桃太郎童話新説 ・・・・・・(205)
- 熊田葦城(著述家、鎌倉町に住す)
日本英語発達史 ・・・・・・(211)
- 荒木田伊兵衛(大阪にて古本商を営む)
研究家紹介
序文
「変り学読本」といふのは今春、大阪毎日新聞"家庭と学芸"に連載した「変り学コンクール」を改題して纏めたものである。
新聞のつゞき物としてあしかけ三ヶ月間の記録を作つた一事だけで、いかに読者に歓迎された好読物だつたかゞわかつてもらへると思ふ。
新聞では「変り学」に振仮名して「だいがくいがいのがくもん」と歯の浮くやうなジヤーナリズム流行形式の標題をつかつたが、真意は"特殊研究"とやるべきところであつた、が活字ヅラがいかついといふシロウト衆にわからぬ感覚から排斥されて、一旦「雑学」に落ちついたが、それも雑は雑草、雑炊の雑で、幾分諸家の研究に礼を失する気もしたので、不満足だつたが「変り学」とふ新造語を用ひた。
収むる処の卅九篇、名の示す通り、どれもこれも風変りの研究である。しかも研究の一づゝを採れば優に一冊の単行本が作れる豊富な内容である、だがジヤーナリズムはその内容を圧縮してマクラだけを香はせ、一班(ママ)をもつて全豹を推す態の軽い読物にしたことはまことに相済まぬ次第だが、かうして余り世間の知らない、学校の先生にも教科書にも教はらない"学問"を紹介したことは新聞製作者として、ちょつと愉快な気もするのである。
昭和十一年初夏 大阪毎日新聞学芸部
奥付